日弁連の意見書について(2024/7/25)
さて今般、日本弁護士連合会より障害年金に関わる意見書が提出されましたので情報提供させて頂きます。
私の感想を2点申し上げます。
・日本年金機構や厚生労働省は、「障害認定基準」が行政実務上絶対であるとして運用しています。日弁連は、この「障害認定基準」が、法令ではなく国年令別表及び厚年令別表の解釈基準でしかないこと、したがって裁判上は法規制がないこと、しかし裁判実務上もその内容が「合理的である」として判断の基準になっていることを明らかにしています。
障害年金に係る裁判は(これは労災でも同じですが)、「認定基準」の枠の中で争った場合、ほとんど負けています。
私は「認定基準」では認定されない事案も数多く依頼を受けています。障害者の権利の擁護、福祉の向上を考えた場合やむを得ないことです。当然審査請求、再審査請求にまで進みます。
・日弁連は、「障害認定基準」の大前提となっている「基本事項」について批判しています。特にその等級の例示です。1級については、「例えば身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病床室内に限られるもの」そしており、2級については、「例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着の洗濯など)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活で言えば、活動の範囲がおむね家屋内に限られるもの」とされています。
これらの文言が多く使われるのは請求が棄却され、審査請求した時の審査官の決定書の中です。例えば2級を求めて請求して不支給となり、それに対する審査請求の決定書には、「2級の例示として、病院内の生活で言えばおおむね病棟内に限られ、家庭内の生活で言えばおおむね家庭内に限られるもの」と「認定基準」の「基本事項」には記載されている。請求人の日常生活の状況はこれに該当しないという具合です。
しかし、厚労省は他方では「治療と仕事の両立支援」を積極的に勧めています。全く逆の施策に思えます。
